支持体は、絵具や墨を受け止める面や物のことです。油彩ならキャンバスや板、日本画なら絹や和紙がこれにあたります。絹は木枠に張り、和紙は木製パネルに水張りして描くのが一般的で、その枠やパネルも支持体の一部です。絵具をつなぐ媒材を指すメディウムとは、別のものです。

支持体は、ふつうは見えないように作られます。西洋のタブローは、画面を窓に見立て、キャンバスの存在を忘れさせてきました。日本の掛軸や屏風は事情が違い、表装や表具を含めた調度品として、生活の空間に溶け込むものでした。ところが近代以降、日本画も展覧会の壁に掛けるパネルの絵になり、支持体を背後に退かせるタブローの形式を取り込んでいきます。

この約束事を解体したのが、1960年代末のフランスで起きたシュポール/シュルファス(支持体/表面)の運動です。木枠だけを見せる、張っていない布をそのまま吊るすなど、絵画をその構成要素に分解して示しました。また、下地を塗らない布に絵具を染み込ませるステインの技法では、絵具と支持体を分けることができません。

支持体が前に出てくる絵画では、何が描かれているかと同じくらい、何の上に描かれているかが意味を持ちます。

石松由布の《コップ一杯に舟》(2025年)は、和紙を貼ったシナベニヤが手前に反り、T字の木枠が画面の外へはみ出しています。日本画の素材を使いながら、支持体が隠されずに絵の一部として加わっている作品です。