浅野雅姫は、西洋美術史における裸婦表現と現代の性産業の構造的連続性を主題に、油彩画とインスタレーションを制作している。ティツィアーノやパルマ・イル・ベッキオの構図を踏襲しながら、古典絵画が神話の修辞で覆い隠してきた性的・経済的構造を転倒させる。神話の記号は経済の記号に置き換えられる。

その根底にあるのは、悪戯心と怒りである。実在するセックスワーカーとの対話を重ね、構造の内部に留まり可視化する。浅野の作品は鑑賞者に気まずさとともに「してやられる」経験をもたらす。

アーティスト・ステートメント

「国や時代は違いますが、彼女たちは同じです」

浅野雅姫は、西洋絵画に描かれてきた美しい女性への憧れから出発した。ティツィアーノやパルマ・イル・ベッキオの裸婦画。しかしそのモデルの多くは高級娼婦だった。描く者と描かれる者、見る者と見られる者。美術史が「崇高な芸術」として浄化してきた視線の非対称性を、浅野は現代の性産業に接続する。実在するセックスワーカーと対話を重ね、名画と同じ構図で描く。神話の記号は経済の記号に置き換えられる。キューピッドの矢は1万円札に、春の花はコンドームに。

浅野の制作を駆動するのは理論ではなく、悪戯心と怒りである。匿名の安全圏から、好き勝手なレビューで品定めされる風俗嬢たちを見て、「買う側に一矢報いたい」という衝動が生まれた。インスタレーション《12月31日お礼です》では、風俗嬢から借り受けたキャミソールの内側にスマートフォンを配置し、鑑賞者に「めくる」行為を要求する。覗き見の共犯者となった鑑賞者は、自らの視線の位置を突きつけられる。

「私自身がルッキズムの奴隷なんです」と浅野は認める。美しい女性を描きたいという欲望から自由ではない。モデルとの関係が完全に対等になり得ないことも自覚している。その矛盾を引き受けながら、構造の内部に留まり、内部から転倒させる。浅野の作品に向き合った鑑賞者は、気まずさとともに「してやられる」経験を味わうことになる。

経歴

油彩画とインスタレーションを通じて、西洋美術史に繰り返されてきた視線の非対称性を主題に制作する。ティツィアーノやパルマ・イル・ベッキオの構図を踏襲しつつ、古典絵画が神話の修辞で覆い隠してきた性的・経済的構造を、悪戯心とともに転倒させる。実在するセックスワーカーとの対話を重ね、彼女たちの経験に向き合いながら制作を行う。その根底にあるのは、美術史と現代社会の双方に通底する女性蔑視への怒りである。愛知県立芸術大学大学院修了。2000年愛知県生まれ。

CV

学歴

2023

愛知県立芸術大学 美術学部美術科 油画専攻 卒業

2025

愛知県立芸術大学 大学院美術研究科 博士前期課程 油画・版画領域 修了

展示歴(抜粋)

2025

『非対称な視線』, aaploit, 東京

『年刊ヤングアダルト』, ニュー銀座堂, 岐阜

2024

『裏マンガミュージアム』, ビニールテープ, 京都

『清流2024』, ギャラリー彩, 名古屋

『年刊ヤングアダルト』, ニュー銀座堂, 岐阜

『CROSS OVER Vol.45』, Senso art gallery cafe, ジョホールバル, マレーシア

2023

『メタ・ヴィジョン』, YEBISU ART LABO, 名古屋

『アル・ハムラー』, 名古屋市政資料館, 名古屋

アートフェア

2025

Incheon Art Show 2025, 仁川, 韓国 (aaploit)