建物の躯体や構造物を測定するために開発されたLiDARセンサーを、大越円香は都市と人物へと向ける。専用の計測機械に搭載されてきたこの技術が、iPhoneという携帯端末に実装されたとき、測定の行為は日常の身振りと地続きになった。大越はその接続点に立つ。
スキャンされた点群データは、採取された場所から切り離され、AR空間内で再構成される。現実世界に召喚されたそれは、元の文脈とは異なる空間として立ち現れる。計測が像を生み、像が空間になる。この連鎖のなかで問われているのは、デジタル変換の技術的正確さではなく、変換された現実が再び空間として立ち現れるときに生じる、知覚の位相差である。
《Surface Drawing》シリーズが照射するのは、見ることと測ることが分かちがたく絡み合いはじめた時代における、イメージの発生条件そのものだ。データは現実を記録しない。データは、現実を別の現実として召喚する。大越の実践は、その召喚の構造を問い続けることにある。