建物の躯体を計測するために開発されたLiDARセンサーを、大越円香は都市と人物へと向ける。捉えられた点群データはAR空間内で再構成され、採取された場所とは別の文脈のなかへ召喚される。距離の計測が、像の生成へと反転する。《Surface Drawing》シリーズが照射するのは、現実がデジタルに変換される瞬間ではなく、変換された現実が再び空間として立ち現れるときに生じる、知覚の位相差である。

アーティスト・ステートメント

建物の躯体や構造物を測定するために開発されたLiDARセンサーを、大越円香は都市と人物へと向ける。専用の計測機械に搭載されてきたこの技術が、iPhoneという携帯端末に実装されたとき、測定の行為は日常の身振りと地続きになった。大越はその接続点に立つ。

スキャンされた点群データは、採取された場所から切り離され、AR空間内で再構成される。現実世界に召喚されたそれは、元の文脈とは異なる空間として立ち現れる。計測が像を生み、像が空間になる。この連鎖のなかで問われているのは、デジタル変換の技術的正確さではなく、変換された現実が再び空間として立ち現れるときに生じる、知覚の位相差である。

《Surface Drawing》シリーズが照射するのは、見ることと測ることが分かちがたく絡み合いはじめた時代における、イメージの発生条件そのものだ。データは現実を記録しない。データは、現実を別の現実として召喚する。大越の実践は、その召喚の構造を問い続けることにある。

経歴

大越円香は、スマートフォンに搭載されたLiDARセンサーを用いて都市と人物を点群データとして捉え、AR空間内で再構成する。測定の道具が像を生み、像が空間になる——その連鎖のなかで、見ることと測ることの境界を問い続けている。1997年秋田県生まれ。2020年秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻卒業、2023年情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了、現在名古屋大学大学院情報学研究科博士後期課程在籍。

CV

学歴

2020

秋田公立美術大学 美術学部美術学科 ビジュアルアーツ専攻 卒業

2023

情報科学芸術大学院大学(IAMAS)メディア表現研究科 博士前期課程 修了

2025

名古屋大学大学院情報学研究科 社会情報学専攻 博士後期課程 在学

個展(抜粋)

2024

『Detection』, anonymous studio, 愛知

『Binocular Data Visualization』, aaploit, 東京

2022

『Invisible view』, KUNST ARTZ, 京都

2021

『表層を観測する Observe the surface』, KUNST ARTZ, 京都

『Unaccounted for " "』, Gallery TURNAROUND, 宮城

グループ展(抜粋)

2024

『透況都/Fluid City』, NEUU XR Communication Hub, 東京

『群馬県立近代美術館コレクション展示:新収蔵作品展』, 群馬県立近代美術館, 群馬

『Archi Disco #4「VORTEX」』, Media shop/mogana, 京都

2023

『Born new art vol.3』, +ART GALLERY, 東京

2022

『SHIBUYA STYLE vol.16』, 西武渋谷店, 東京

2021

『SHIBUYA STYLE vol.15』, 西武渋谷店, 東京

2020

『SHIBUYA STYLE vol.14』, 西武渋谷店, 東京

『アートアワードトーキョー丸の内2020』, 東京駅行幸ギャラリー, 東京

コレクション

群馬県立近代美術館