描くことは、対象が画面に在るための条件を最初から構築することだ。機能が剥がれたとき、その構造はより純粋に現れ、その姿は軽やかに見える。描かれたものはすべて、同じ必然性の中に置かれている。私の絵画は、見ることの前提の上に立っている。

アーティスト・ステートメント

描くことは、見えるものを写し取ることではない。

対象が画面に在るための条件を最初から構築することだ。その意識は背景の一点にまで及ぶ。壁の質感、光の循環、対象を包む空気の密度。それらは雰囲気ではなく、対象がそこに在るための条件である。描かれたものはすべて、同じ必然性の中に置かれている。

役目を終えたものたちはすでに何かであることをやめ、静かに存在だけを続けている。描く対象が壊れたもの、欠けたものに向かうのはそのためである。機能が剥がれたとき、その構造はより純粋に現れ、その姿は軽やかに見える。

モチーフをたどりながら描く過程で、対象への親しみを錯覚する。しかしそこに近づくほどに、そのものが持つ固有の時間、知り得ない時間が際立ち、対象は遠くなる。

本来の場所から持ち出されたモチーフの傷や欠けは、役割や機能の喪失として理解される。しかしながら多くの場合、外部から与えられた判断にすぎない。本来の姿を知らなければ、どこが壊れているのかの判断さえ定かではない。その曖昧さと沈黙の中で継続する日々は、空虚さをはらみながらも、ごく自然である。

私の絵画は、見ることの前提の上に立っている。

経歴

高橋美紗貴は、本来の機能を失ったもの、役目を終えたものを主なモチーフに絵画を制作する画家である。描くことを、見えるものを写し取る行為ではなく、対象が画面に在るための条件を一から構築する行為として捉える。背景の一点までを雰囲気としてではなく、対象と同じ必然性のなかに置く。機能が剥がれたときに構造が純粋に立ち現れ、その姿が軽やかに見える画面は、見ることの前提そのものを露わにする。

2001年福島県生まれ、東京を拠点に活動。武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業(2024年)、同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了(2026年)。

CV

学歴

2024

武蔵野美術大学 造形学部油絵学科油絵専攻 卒業

2026

武蔵野美術大学 大学院造形研究科美術専攻油絵コース 修了

グループ展(抜粋)

2025

『第34回奨学生美術展』, 佐藤美術館, 東京

『諏訪敦研究室展 LINGUA FRANCA』, 長亭ギャラリー, 東京

2024

『静穏 -神田梓 高橋美紗貴2人展-』, フリュウギャラリー, 東京

『諏訪敦研究室展 MELTING POT』, 長亭ギャラリー, 東京

『FIRST CONTACT』, REIJINSHA GALLERY, 東京

『桜花桃李』, モノノアハレヲ, 福岡

2022

『第9回未来展 -日動画廊 美術大学学生支援プログラム-』, 日動画廊, 東京

『Spark展』, 新井画廊, 東京

受賞・助成

2026

武蔵野美術大学 修了制作優秀賞

2025

第34回奨学生美術展(佐藤美術館)名村大成堂賞, 松田油絵具賞, PIGMENT TOKYO賞

佐藤国際文化育英財団 第34回奨学生

2024

武蔵野美術大学卒業制作 優秀賞 および三雲祥之助賞

2022

武蔵野美術大学 油絵学科学内コンクール 諏訪敦賞

はなう美術振興財団 写実画家育成助成金