岩絵具、水干絵具、墨、胡粉、雲肌麻紙、白麻紙、新鳥の子紙、木製パネルといった現代の「日本画」に用いられる素材を、これらにより構築される作品を、その作品を空間に存在させるということを、「日本画」が成立する以前の日本美術の延長線上に位置づけて考えてみる。
近世以前の日本美術においては、素材の制約というものが前提として存在していた。岩絵具は油絵具のような自由な混色はできず、和紙や絹といった支持体は非常に繊細で、補強や取り扱いに工夫が求められた。画家がそうした制約のなかで最適な表現を模索していくことで、日本美術の系譜は紡がれていった。
その過程で生まれた特徴のひとつに、描画を施さずに余白によって空間を示す、すなわち支持体が画面における表現の一端を担うという傾向がある。素材と正面から向き合うことで、主題・描画材・支持体のあいだには往還関係が構築され、それぞれが固定されることなく浮遊する。
自身が目で見た記憶を主題とし、記憶のもつ抽象的・分散的性質と絵画の構造とを連動させることで、主題・描画材・支持体それぞれが画面上で絶えず関係し続ける状態を探る。