Tidal - Logos on the Flat
熊谷 綾乃
aaploit(アプライト)では、2026年4月10日(金)から4月26日(日)まで熊谷綾乃の3回目の個展「Tidal – Logos on the Flat」を開催します。
ブランドロゴは欲望の接続装置である。所属や成功といったイメージへ人を繋ぎ、衣服は身体を離れた後もその接続を維持し続ける。古着には前の持ち主の身体の痕跡が残り、ロゴはその欲望を媒介する記号として付随している。熊谷綾乃は、ブランドロゴを伴う古着を「既に成立した欲望の痕跡」として選択し、工業用ミシンと手仕事による刺繍で介入する。
ここで行われているのはブランドへの批判ではない。欲望が循環する構造の内部に、別の層を重ねる試みである。熊谷が施す植物的なモチーフは、消費とは異なる時間のリズムを衣服の表面に挿入する。ロゴは消されず、花弁の下で呼吸するように残る。破壊ではなく共存。二つの時間が同じ布の上に重なる。
ブランドロゴが形成する市場的序列は、社会的な欲望という引力によって常にその水位を変動させている。それはさながら抗えない潮の満ち引きのようである。本展では、全作品を一律価格で提示する。潮を引かせ、序列の地形をフラットな干潟へと引き戻す。鑑賞者がどの作品の前で立ち止まるか、無意識にブランドの格付けを行ってしまうその視線のふるまいさえも、本展は作品の一部として取り込む。
2022年の個展「altitude」で熊谷は高山植物の生命の在処を探った。2025年の「Imprint – Texture of Logos」ではブランドロゴの表層に身体的な痕跡を刻み込んだ。本展「Tidal – Logos on the Flat」は、その地層をさらに掘り下げる。アパレルの生産・流通の現場に身を置いていた熊谷は、システムの外部からではなく内部から介入する。本展の作品は、観る、着る、所有する、使う、という四つの態度に開かれている。作品は終点ではなく、次の欲望の入口である。
本展覧会、作品に関してのお問合せは info@aaploit.com までメールにてお願いいたします。
Tidal - Logos on the Flat
- 会期
- 2026年4月10日 – 4月26日
- オープン
- 会期中の金、土、日 13:00 – 18:00 ※会期中の他の日程の観覧をご希望の場合にはご予約ください。
- 会場
- aaploit, Tokyo
Artist
熊谷 綾乃
1990年生
欲望の記号の上に、名前を持たない生命は宿れるか。熊谷綾乃はこの問いを、衣服という物質の上で問い続ける。ブランドロゴを持つ古着を選び、工業用刺繍ミシンで架空の植物を重ねる。どの種にも同定できないが、植物であることの条件を備えた形象を、ロゴを消すのではなく、花弁の下で呼吸するように残す。アパレルの生産・流通の現場を経た後、産業的な速度で縫い進むミシンという道具を、植物の時間を持ち込む手段として選んだ。東京造形大学テキスタイルデザイン専攻領域卒業、同大学院デザイン研究領域修了(2016年)。