田辺朔葉のポートレートは、一人の外見を再現しない。モデルの家族、友人、その人を想起させる人々へと取材を広げ、一万枚を超える写真の断片から、一つの顔を編み上げる。

そこに現れるのは、その人を認識してきた多くの眼差しの総体である。絵具の厚みは判断の蓄積を記録し、画面に残る重みは、一つの生へ向けられた持続的な注意の痕跡となる。

アーティスト・ステートメント

⽥辺朔葉がポートレートを描くとき、モデルとの対話から始める。モデル本⼈はもとより、本⼈の家族、友⼈、その⼈を想起させる⼈々へと取材が広がっていく。⽼若男⼥を問わず、写真を撮影し、アーカイブは⼀万枚を超えることもある。そのなかから表情や眼差しの断⽚を選び、⼀つの顔へと編み上げる。

完成した肖像は、⼀⼈の外⾒の再現ではない。だが全く架空の⼈物でもない。

その⼈を認識しているのは何か。その⼈⼀⼈の像ではなく、多くの関係性の総体ではないか。誰かが存在するということは、⾒られ、記憶され、認識されることと切り離せない。この制作のプロセスは、その構造を画⾯上に出現させる試みである。

⼀層ずつ、精緻に描き込む。絵具の厚みが判断の蓄積を記録する。選ばれた⼀つの類似と、退けられた別の可能性。画⾯に残る重みは、⼀つの⽣に向けられた持続的な注意の痕跡である。 ⽥辺は肖像画を通じて、他者を認識するとはどのようなことなのかに向き合う。

経歴

「他者を認識するとはどのようなことなのか」を問いとして、肖像画制作を行う。モデルとの対話から始まり、家族、友人、その人を想起させる見知らぬ人々へと取材を広げ、10,000枚を超えることもある写真から断片を選び、ひとつの顔へと編み上げる。画面に現れるインパストの物質感は、ひとつの顔の内に重ねられた時間の堆積を示すようである。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻在籍。2025年、第5回ホキ美術館大賞展入選。

CV

学歴

2026

東京藝術⼤学美術学部絵画科油画専攻 2年次在学

グループ展(抜粋)

2026

『Portrait』, アップステアーズギャラリー, 東京

受賞・助成

2025

第5回ホキ美術館⼤賞展⼊選