球体関節人形は、肩や肘、膝などの関節に球を仕込み、手足や首を自在に動かしてポーズを取らせることができる人形です。

源流の一つに、1930年代のドイツでハンス・ベルメールが作った人形があります。ベルメールは組み替えた人形をさまざまな姿勢で写真に撮り、1934年に写真集『人形』として発表しました。四谷シモンは後に、人形の歴史の中でベルメールの仕事は「世界史的な事件」だったと語っています。

日本では1965年、澁澤龍彦が雑誌『新婦人』でベルメールの人形を紹介しました。四谷シモンは古本屋でたまたまその誌面に出会い、家に帰ると、それまで人形のようにして作っていたものを、すべて捨てます。人形は動くものだ、人の形、「ひとがた」なのだ、と考え始めたのはそこからでした。当時の日本の人形は、工芸として、民芸品として、何かのテーマを担うものとして作られてきました。四谷シモンは、人形はただの人の形でいい、という地点から始めたのです。日本で人形が表現の一つの領域として立ち上がっていく、重要な起点の一つです。

「人形とは何か」は、答えの出ない問いですが、人が人の形を作る欲求は絶えず溢れ出てくるものなのでしょう。

参考文献

四谷シモン「北鎌倉へ向かって」『文藝別冊 総特集 澁澤龍彦 ユートピアふたたび』河出書房新社(KAWADE夢ムック)、2002年、pp.50–67