庭を詠む / Listening to the Garden
半澤 友美
半澤友美の個展「庭を詠む/ Listening to the Garden」を2025年12月5日から12月21日まで開催いたします。
半澤友美は、紙を作るという行為を通して、物質と記憶の関係を探求してきました。紙は単なる素材ではなく、繊維の絡まりによって成り立つ構造物であり、人間の物語を内包するオブジェクトです。本展において半澤は、祖母の俳句と庭という私的な記憶を起点としながら、アイデンティティという普遍的な問いへと向かいます。私たちは何によって他者を認識し、何によって自己を保つのか。半澤の制作は、アイデンティティが固定されたものではなく、他者との関係の中で揺らぎながら立ち上がってくることを、紙という物質を通して静かに示しています。
「祖母は長年、庭を眺めながら俳句を詠んでいた。それは外に出ることが少なくなっても変わることはなく、季節ごとに移ろう花々を見つめ、一句を詠む。その日々が積み重なっていった。」
庭は祖母が亡くなった後も時間とともに移ろい続けます。その庭に立ったとき、祖母の気配を感じた半澤は祖母が見ていたその庭から、四季の花々を集め、紙に宿していきます。紙は庭の記憶を抱き、祖母が庭をみて言葉にしたように、半澤は庭を紙にすることで詠むことの追体験を行います。
祖母が見ていた庭や、祖母が詠んだ句、祖母が触れていたもの——それらの痕跡が、祖母という存在を形作っているのでしょうか。それとも、他者である半澤が感じ取る気配こそが、祖母を立ち上げらせるのでしょうか。紙を作りながら、その問いが浮かんできます。アイデンティティは、他者との関係の中で揺らぎながら成立していくものでしょう。
揺らぎ続ける中で、祖母の気配は紙の中に、庭の中に、名残として宿ります。その人がそこにいないことと、その人を感じることは、同時に成り立つのです。アイデンティティとは、固定されたものではなく、揺らぎをそのまま受け入れることだと半澤は示します。
半澤 友美, もう一つの庭, 2025, 楮、印刷物、木, 970 × 850 × 30 mm, ©2025 半澤 友美, Courtesy of the Artist and aaploit
本展覧会、作品に関してのお問合せは info@aaploit.com までメールにてお願いいたします。
庭を詠む / Listening to the Garden
- 会期
- 2025年12月5日 – 12月21日
- 開廊時間
- 会期中の金、土、日 13:00 – 18:00 ※会期中の他の日程の観覧をご希望の場合にはご予約ください。
- 会場
- aaploit, Tokyo
Artist
半澤 友美
1988年生
紙や繊維を主な素材とし、記憶や時間の痕跡、環境や身体との関係を主題に、彫刻、平面、インスタレーション作品を制作。紙を表面としてではなく、素材のプロセスを通じて形成される構造として扱い、日常の行為や感覚の痕跡を繊維の重なりや絡まりのなかに取り込むことで、経験や時間の流れを表象するのではなく蓄積させることを試みている。主な展覧会に「庭を詠む / Listening to the Garden」(aaploit、東京)、「PAPER : かみと現代美術」(熊本市現代美術館)、「The Histories of the Self」(ポーラ美術館)などがある。国内外のアーティスト・イン・レジデンスにも参加し、様々な環境や場との関わりのなかで制作を続けている。
1988 栃木県宇都宮市生まれ 東京都拠点
展示風景