石踊ミチ、石黒光、シクラトウカ 三人展を2025年3月14日(金)から3月30日(日)の日程で開催いたします。本展は三人のアーティストの話し合いからうまれました。その話し合いにaaploitも参加し、企画した展覧会です。
大きな物語が終わり、不確実な時代の到来に伴ってサバイブする手法として松井みどりは「支配的な文化のなかに、個人のユニークな「語法」をつくり出し、世界を知覚したり、そこで活動したりするための新たな術を見出すことのできる人に共通の姿勢である。」(1)と指摘している。現代美術において、日常への眼差しは絶えず更新され続けている。それは単なる日常の切り取りや再提示ではなく、むしろ現実を再構築し、新たな意味を見出す実践として展開されてきた。
三者に共通するのは、日常に潜む違和や不可視の領域への探求だ。
石踊ミチは、紙粘土という素材を通じて物質性と非物質性の境界を探り、架空と実在の逆転した関係性を提示する。その手法は、プリミティブな表現への回帰でありながら、同時に現代における存在論的な問いかけともなっている。
石黒光の実践は、マルセル・デュシャンの「アンフラマンス」という概念から界面を抽出し、独自の解釈を展開する。物質に宿る余韻と、それを感受する精神との交錯する領域を探る営みは、まさにこの界面への着目から生まれている。同時に「人」という記号を通じた自己との対話において、内省と反撥の往還から生まれる痕跡を作品として昇華させる。その二重性は、現代における主体のあり方そのものを問い直す射程を持っている。
シクラトウカは、記憶された風景やモチーフを意図的に解体し、再構築する。その過程で生まれる「ずれ」や「かき消し」は、視覚的な快楽を超えて、私たちの知覚や認識の構造そのものへの問いかけとなる。
三者の作品群は、一見すると個人的な経験や感覚に基づくものでありながら、実は私たち一人一人が日常で感じている微細な違和感や発見を、独自の視点で昇華させたものである。それは誰もが持ちながら見過ごしてきた感覚への気づきであり、同時に現代美術における新たな表現の可能性を示唆するものでもある。本展は、現代美術研究者の吉田理紗との対談プロジェクトと併せて、現代における表現を探る試みとなるだろう。
日常に寄り添うくしの目に宿るほこりは、見過ごされた微細な存在の詩学となる。本展は、現代美術における新たな批評的視座の可能性を提示する意欲的な試みとして位置づけられる。
(1)松井みどり. マイクロポップの時代:夏への扉. PARCO出版. 2007. pp30-32.
石踊ミチ、石黒光、シクラトウカ 三人展に関してのお問合せは info@aaploit.com までメールにてお願いいたします。
展覧会概要
石踊ミチ、石黒光、シクラトウカ 三人展 『くしの目のほこり』
- 会期
- 2025年3月14日(金)から2025年3月30日(日)
- 時間
- 会期中の金、土、日 13:00 – 18:00
※会期中の他の日程の観覧をご希望の場合にはご予約ください。 - 会場
- aaploit 東京都文京区関口1-21-17 TMKビル 2階
アーティスト略歴
石踊 ミチ / Michi ISHIODORI
- 2024
- 女子美術大学美術学部ヴィジュアルデザイン専攻卒業
グループ展
- 2024
- 新宿眼科画廊20周年記念展『新しい扉の開け方』(新宿眼科画廊、東京)
『DAYTIME』(powderoom、東京)
『バケツの底が抜けてもバケツ』(Room_412、東京) - 2023
- 『24時の脱皮』(Room_412、東京)
石黒 光 / Hikaru ISHIGURO
- 2024
- 東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース卒業
東北芸術工科大学大学院修士課程芸術文化専攻絵画領域に在学中
個展
- 2024
- 『witch craft』(haco-art brewing gallery-、東京)
グループ展
- 2025
- 『手跡-東北から紡ぐリアル』(美岳画廊、東京)
- 2024
- 『 THE JOY OF BEING WITH 』 (COLORBEAT、ソウル)
『第9回石本正日本画大賞展』(石正美術館、島根)
『 Emerging Echoes: Presenting Realism 』 (COLORBEAT、ソウル)
『 dadacha-東北芸術工科大学大学院4人展- 』(銀座スルガ台画廊、東京)
『アマダレ 石黒光・荻莊天馬・戸田創史』(画廊翠巒、群馬)
受賞
- 2024
- 「2023年度東北芸術工科大学卒業/修了研究・制作展」美術科賞
シクラ トウカ / Shikura Toka
- 2024
- 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
多摩美術大学大学院博士前期課程美術研究科絵画専攻油画研究領域に在学中
グループ展
- 2024
- 『電気をつけたまま、よく寝た』(Room_412、東京)
『ヘアクリップ』(多摩美術大学、東京) - 2023
- 『なかったことにできない』(スペースくらげ、神奈川)