ねばーもあ
PAINTING

ねばーもあ

2023

メディウム

シルクスクリーン, アクリル, 研磨, 木パネル

サイズ

210 × 297 mm (8 ¼ × 11 ¾ inches)

《ねばーもあ》に描かれているのは高校の教室であろう。机と椅子が並び、黒板と向き合い女子高生が浮いている。足が三本見える。三本目は宙に漂い、女子高生から切り離されているように見えるが、形と色から同じ女子高生の足だと気がつく。この女子高生は、古事記に記される八咫烏として現れる。制服をまとってこの教室に現れ、その指先が差すのは黒板の日の丸だ。端が垂れている。

エドガー・アラン・ポーの詩のなかで、カラスは一語しか発しない。「Nevermore」。二度とない、もはや。問いを重ねるたびに同じ言葉で応じるカラスは、希望の言語を持たない。《ねばーもあ》において、その宣告は教室の空気と交わる。未来へと続くはずの場所で、神話の鳥が古い象徴を指している。

八咫烏はもともと、道を示す鳥だ。この国を導いた。しかし今、それが指し示す先に道があるか。答えは示されない。若者が感じる行き先の不確かさ、この国の行方への問いは、ズレた線の内側に静かに留まる。

鹿野の制作は、木パネルに下地を施し、シルクスクリーンを刷る。版は線だけであり彩色は直接施される。その画面を研ぐ。漆芸の研ぎ蒔絵の工程を援用した研磨で表面の層を削り出し、その上に再びシルクスクリーンを重ねる。研ぎ出しとシルクスクリーンの往復は、層を削りながら不整合を刻む工程でもある。ぴたりと重なる線と逸れた線が共存する画面は、作家の認識と世間とのあいだに生じる裂け目を、技法そのものとして可視化する。

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