植松美月は、紙を切り、染め、スタンプを押す。同じ動作を、気の遠くなる時間のなかで繰り返す。行為は素材に蓄積し、素材は行為によって変容する。その往復のなかで、一度きりの接触では届かなかった何かが、姿を現しはじめる。植松の制作において、反復は同じことをすることではない。繰り返すことで初めて開かれる、世界との回路である。

アーティスト・ステートメント

植松美月は、紙を切り、染め、スタンプを押す。鉄を叩き、折り、重ねる。同じ動作を、気の遠くなる時間のなかで繰り返す。

行為は素材に蓄積する。素材は行為によって変容する。その往復は、作者の意図が素材を制御するのではなく、反復そのものが両者のあいだに固有の関係を発生させていく過程だ。一度きりの接触では届かなかった何かが、繰り返しの堆積のなかで、徐々に姿を現しはじめる。

植松の制作において、反復は同じことをすることではない。切ることは、前の切断の痕跡の上で行われる。染めることは、すでに染まった層の上に重なる。押すことは、先の圧力が残した微細な変形を引き継ぐ。動作は蓄積し、蓄積は次の動作の条件を変える。同じ行為は、二度と同じ行為ではない。

この構造のなかで、植松が問うているのは制作の効率でも表現の完成でもない。途方もない時間をかけて世界に触れ続けることで初めて開かれる、知覚の回路である。作品は、その回路が通った痕跡として存在する。

経歴

植松美月は、反復する行為が素材と身体のあいだに何を発生させるかを問い続けている。鉄を叩き、紙を切り、同じ動作を気の遠くなる時間のなかで繰り返す制作過程において、行為はやがて自身の呼吸と同期しはじめる。作品上に残る痕跡は、完成の記録ではなく、その同期が通過した証である。1995年兵庫県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻博士後期課程修了、博士(美術)。

CV

学歴

2018

日本大学 芸術学部 美術学科 彫刻コース 卒業

2020

東京藝術大学 美術研究科 彫刻専攻 修了

2023

東京藝術大学 美術研究科 彫刻専攻 博士後期課程 修了

個展

2025

『さゆらぎ』, aaploit, 東京

2024

『降りつむ』, 名都借倉庫, 千葉

『月に浮かぶ』, aaploit, 東京

2023

『野村美術賞受賞特別展』, aaploit, 東京

グループ展

2023

P.O.N.D.2023 Dialogue/あたらしい対話に、出会う。』, 渋谷PARCO, 東京

野村美術賞受賞記念展』, 鉄鋼ビルディング, 東京

2022

『東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2022』, 東京藝術大学 陳列館, 東京

2021

『柳瀬山荘と彫刻』, 柳瀬荘, 埼玉

2020

『第68回東京藝術大学修了展』, 東京藝術大学, 東京

『芸大アーツイン丸の内』, 丸の内ビルディング, 東京

2019

『石・土・金 多様な素材の中で』, gallery SOL, 東京

『tokunsterlem』, ヴェストファーレン・ヴィルヘイム大学, ミュンスター, ドイツ

『公益財団法人北野生涯教育振興会 彫刻奨学生作品展』, 日本大学芸術学部, 東京

2018『東京五美術大学連合卒業 ・修了展』, 国立新美術館, 東京

コレクション

2022

東京藝術大学美術館 収蔵

2021

チャームケア御殿山 エントランス

2019

山梨県笛吹市 大窪いやしの杜公園

2018

西馬込Ⅴプロジェクト[アジールコート西馬込]マンションエントランス

受賞歴

2024

第17回「ART IN THE OFFICE」選出

2023

テラスアート湘南アワード 2023 グランプリ 受賞

野村美術賞 受賞

2020

藝大アーツイン丸の内2020三菱地所賞 受賞

2019

平山郁夫奨学金 授与

2018

公益財団法人北野生涯教育振興会彫刻奨学金 授与

2017

国際瀧冨士美術賞特別賞 受賞

メディア

2024

ArtSticker インタビュー掲載 https://artsticker.app/events/31736

2023

美術の窓 No.476 2023年5月号 インタビュー掲載

その他

2024

経済産業省内に作品展示

2019

神山アートインホテル/レジデンス

国際彫刻研究プロジェクト参加(ドイツ, ミュンスター)/レジデンス

スタンレー電気株式会社/作品レンタル(2019.05-2020.05)

東海さるく(延岡、宮崎県)/レジデンス・ワークショップ

2018

Big on Bloor Festival(カナダ, トロント)/ワークショップ