aaploit(アプライト)では、2026年1月16日(金)から2月1日(日)まで、熊谷 悠那 個展「225,000 Carat Diamond」を開催します。
熊谷悠那の制作の起点には、ダイヤモンドのように価値が誇張されるものと、廃棄され忘れられるものが同一の地平に置かれているという視点がある。空き箱や使い終えた容器といった社会的に「無価値」とされる対象を、熊谷は華美なモノと等価の存在として扱い、そこに潜む美と暴力性、憧れと無関心の揺れを見つめ直す。 この姿勢は、価値づけの序列や華美性をめぐる社会的スティグマへの静かな抵抗としても働く。 熊谷はそれらに触れることで、身体と世界の関係を微細な単位から再構築しようとする。描くという行為は、自己像や感情の輪郭が生成されるプロセスとして捉えられ、生活の時間と制作の時間が互いにとけ合っている。曖昧なかたちは、見る者の身体に刻まれた感覚の層に触れ、経験の構造を反照させる。
15cmのピンヒールは何の役にも立たない。
だけど履く。
ティファニーよりも加湿器が欲しい。
頑張ってシミ取りや脱毛に通って、キラキラしたドレスを着ている女の子も全然未風呂だったりする。
収集し続けた不要品——タバコの空き箱、アボカドの種、カラコンの空き箱。
正しさの裏側にあるもの、痛み、コンプレックスを柔らかく受け止めながら私とあなた(世界)を見つめたい。
手の甲に香水を、無人島にはラメを、あなたに薔薇を。
これらの言葉が示すように、熊谷の作品はフェミニティ、装飾、身体、自己管理といった現代的な規範の複層を、対象のスケールを最小化することで批判的に可視化する試みと言える。

ハイブランドのロゴやジュエリーの輝きがキャンバスに登場する一方、友人から譲られた箱や自身が消費後に残したタバコの箱といった「価値の剥奪された物質」が支持体として用いられる。そこに描かれる女性像、髑髏、十字架といったモチーフは、自己の像が社会的規範や絵画の伝統と交錯するポイントを露呈させ、絵画が“個人の経験の器”を超えて、記号と身体の関係を問う装置として機能する。
熊谷の作品に度々現れる“no pain no life”という言葉は、pain(痛み)と paint(描くこと)の接続を示し、身体的・心理的経験が制作行為と切り離せないことを強調する。 また、唇や蛇、十字架などのイメージが焼成され、セラミクスの断片として立ち上がることで、描線は単なる平面上の痕跡ではなく、身体に装着可能な「触覚性のあるイメージ」へと変換される。これにより、作品は鑑賞の場にとどまらず、身体の延長として存在する可能性を帯びる。
本展タイトル「225,000 carat diamonds」は、アーティスト自身の体重をカラット換算した数値である。身体に価値を割り当てる社会的ロジック──特に女性の身体を対象化し、価値として管理してきたまなざし──を、そのまま数値へと変換することで、熊谷はそれを批評的に露出させる。 ここでは「宝石の価値」と「身体の重さ」が同一単位に並置され、価値の体系が抱える恣意性と暴力性が明確化される。
本展覧会、作品に関してのお問合せは info@aaploit.com までメールにてお願いいたします。
展覧会概要
225,000 Carat Diamond
- 会期
- 2026年1月16日(金)から2026年2月1日(日)
- 時間
- 会期中の金、土、日 13:00 – 18:00
※会期中の他の日程の観覧をご希望の場合にはご予約ください。 - 会場
- aaploit 東京都文京区関口1-21-17 TMKビル 2階
熊谷 悠那 (くまがえ ゆうな)/ KUMAGAE Yuna
- 2002
- 福岡県出身
- 2025
- 多摩美術大学 絵画学科油画専攻 卒業
展示歴(抜粋)
- 2025
- “INCHON Art Show 2025”, 松島コンベンシア, 仁川広域市, 韓国
- 2024
- “ARTBAY TOKYO ART FESTIVAL 2024”, 日本科学未来館, 東京
- 2023
- “Art Wonderland”, そごう横浜店, 神奈川
“Femelo vol.2”, MIYASHITA PART, 東京
“100年後、もういない人へ。ーやっぱりこのフィクションですら現実の延長線でしかないー”, 根津 Hello Bee, 東京
“ART STUDENTS STARS Vol.2”, 東急プラザ渋谷, 東京
“SHIBUYA STYLE vol.17”, 西武渋谷店, 東京 - 2021
- “3331 ART FAIR 2021”, 3331 Arts Chiyoda, 東京
