ダーヤマ佰彩は、現代社会における人間の複雑な状態を、独特の手法で表現するアーティストです。彼女の作品は、アニメーションの流麗な線と、薬のPTPシートが持つ物質性の融合により、見る者を魅了します。
「元気になる薬で元気な女の子を描く」というコンセプトは、一見矛盾するようでいて、現代人の抱える深い葛藤を反映しています。社会学者のジークムント・バウマンが提唱した「リキッド・モダニティ」[1]の概念は、流動的で不安定な現代社会において、人々は常に「元気」であることを求められます。しかし、その「元気」は時として人工的なものであり、ダーヤマの作品はその矛盾を鮮やかに描き出します。
ダーヤマの作品は、大量生産される薬のパッケージを用いることで、新たな魅力を創出しています。これは、消費社会における個性の在り方への問いかけとも解釈できるでしょう。さらに、ゲームやアニメなどのサブカルチャーの影響を受けた彼女の表現スタイルは、異なる文化要素が融合し、新たな表現を生み出しています。
ダーヤマ佰彩の作品は、現代社会の複雑さを捉えつつ、そこに存在する希望と活力を色鮮やかに表現しています。彼女の作品は、私たちに現代を生きることの意味を問いかけ、同時に、既存の美的規範や社会的価値観に挑戦する新たな表現の可能性を提示しています。それは、薬という日常的でありながら生命に直結する物質を通じて、現代社会の本質的な矛盾と可能性を浮き彫りにする試みなのです。
引用文献:
[1] Bauman, Z. (2000). Liquid Modernity. Polity Press.(ジークムント・バウマン 森田 典正(訳)(2001). リキッド・モダニティ: 液状化する社会. 大月書店)
WORKS / INSTALLATION VIEWS
EXHIBITIONS
経歴
ダーヤマ佰彩 / Dayama Hakusai
北海道出身、東京拠点。2001年生まれ。大学卒業後はアニメーターとして活動、イラストと薬のゴミ(PTPシート)を融合した健常と病理の二面性が垣間見える作品を制作している。
- 2023
- 多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース 卒業
展示歴
グループ展
- 2024
- Interwoven, aaploit, (神楽坂, 東京)
Emerging Echoes: Presenting Realism, Gallery COLORBEAT, (ソウル, 韓国)
Mango Art Festival 2024(バンコク, タイ) - 2023
- A4 WALL MATSUYA GINZA, 松屋銀座, (東京)