辰巳寧々は、社会の複雑性と人間の本質を鋭く探求するアーティストである。彼女の作品は、社会システムと人間性の相互作用をテーマに、伝統的な油彩技法を駆使しながら、現代の社会事象や日本のポップカルチャーなど、多様な要素を融合させ、再構築し、人間社会の多層的な側面を浮かび上がらせる。
特に彼女のポートレート作品は、人物の外見を超え、内面や社会との関係性を映し出すことで、観る者に深い印象を与える。油彩の質感を巧みに活かし、人間の複雑な感情や社会的立場を鮮明に表現し、社会の縮図としての肖像を描いている。
辰巳の作品群は、個々の絵画が独立したストーリーを内包しながらも、シリーズとして見ると、より大きな社会の物語が浮かび上がる特徴がある。この手法は、John Bergerが『Ways of Seeing』で指摘した「見ること」の社会的性質を想起させる[1]。観る者は、一枚一枚の作品を通じて、事件や事故の背後にある社会の仕組みや人間の本性を垣間見ることができます。同時に、彼女のポートレートのシリーズは、個人の内面世界と社会との複雑な関係性を、鮮烈に描き出しています。
社会システムの理解を基盤としつつ、辰巳は人間社会を維持するための努力とその限界を芸術的に表現しています。彼女の描く人物たちは、社会と人間性の狭間に立つ存在として描かれ、社会規範、個人の権利、そして人間社会の理想と現実の乖離が引き起こす倫理的ジレンマを象徴しています。
探究心に満ちた辰巳の芸術は、社会と個人、理想と現実の境界を再定義し、現代日本アートの新たな潮流を形成しています。彼女は、鋭い洞察力と豊かな創造性を駆使し、社会の表層と深層を行き来しながら、独自の芸術世界を構築し続けているのです。辰巳寧々の作品は、観る者に人間社会の本質と自身の存在意義を問い直す機会を提供し、現代アートの新たな地平を切り開いています。
参考文献:
[1] Berger, J. (1972). Ways of Seeing. London: Penguin Books.
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PROFILE
辰巳寧々 / Nene Tatsumi
- 2018
- 慶應義塾大学法学部法律学科 卒業
- 2021
- ソルボンヌ大学大学院DSUビジネス法修士課程 卒業
- 2024
- 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程 卒業
個展(抜粋)
- 2024
- 「In Your Dream」東京
- 2023
- 「Whimsical」香港
グループ展(抜粋)
- 2024
- 「EmergingEchoes: Presenting Realism,」ソウル、韓国
- 2022
- 「WHAT CAFE × WATOWA GALLERY EXHIBITION -DRIVE UP!-」東京